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ひらがなばかりの母の・・・

-暮らしの新聞-2013年6月1日号・第3面 ~俳句随想~(34) 整体師 出田邦博

○虫の声月よりこぼれ地に満ちぬ (富安風生)

かつての日本の秋の夜は、月の光があまねく照らしあちこちから虫の音が聞こえてきていた。

この句は青白い月光が大地一面に降り注ぐ中、一斉にすだく虫の声を「月よりこぼれ」と繊細に捉え幻想的世界を創り出している。

月光を浴び、虫の音色に耳を傾けながら作者は、どこからか鳴り響いてくる天然の交響曲に包まれたようになったのであろう。

若者よ、爽やかな秋の夜はケータイ・スマホを置いて外に出よう。

○をりとりてはらりとおもきすすきかな (飯田蛇笏だこつ)

すべてがひらがなで表記されて解りやすいのだが、中七の「はらりとおもき」は、相反する意味の言葉が連なりふと不思議に思わせる。手折った芒(すすき)の垂れた穂先ははらりと軽いのだが、それが手元には一寸重たく感じられたのだ。視覚と触覚を融合させ全体として一本の芒のやわらかさとたおやかさを微妙に調和させている。わずか十七文字で芒のススキらしさをくっきりと浮かび上がらせた。言葉の綾、俳句の魅力である。

○一生の手紙の嵩(かさ)や秋つばめ (田中裕明)

空を見上げていると、彼方を南に帰る燕がスイスイと渡って行く。自分はどこへ帰るのだろう。今までどれだけの手紙を書きどれだけの便りを貰ったことだろう。まだまだ伝えたいことが多くある―。

作者は六年間白血病と闘いながら四十五歳で夭折(ようせつ)した人という。不治の病で長くは生きられないとの悲痛な思いを抱え、これまで生きて来た証を手紙の束に託した覚悟の一句である。それでも感傷的にならずに澄んだ心境が窺(うかが)える。

便箋も封筒もあまり用いられず手紙など廃れて、メール全盛の時代だが、誰にも大事にしている手紙の一、二通はあろうし、誰かに伝えたい思い・遺しておきたい言葉もあるだろう。

○秋の灯にひらがなばかりの母の文 (倉田紘文こうぶん)

先月号で取り上げた、野口英世の母のひらがな手紙に似た母と子の心の絆を詠んだ温かい句。

田舎の母親が都会に出た息子へ、ひらがな書きの手紙を寄こした。秋の静かな夜長、そのたどたどしい手紙を眼を熱くして読み浸る若者―。私もそうだった。新聞販売店の薄暗く狭い2段ベットの上で何度も母の鉛筆書きの手紙や、父からの叱責の便りを読み返したものだ。色褪せたそれら幾通かは、今もどこかに仕舞ってあるはずだ。

世の中が急激に変わり通信手段が様変わりして、親が子を思いやる慈愛、子が親へ寄せる感謝の念も変わってしまうのでしょうか?

あなたの健康を支援します。「気功整体イデタ」tel:042-395-5452

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―市内廻田町「気功整体」主宰―

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